上海オーケストラ物語
『バルトの楽園』という映画を6月に観たんですが、その後で、NHK教育で放送している「N響アワー」で、映画の撮影が行われたオープンセットとロケ地を訪ねるというのをやっていまして。そこで、捕虜として収容されていたドイツ兵のなかには、上海のオーケストラで活躍していた人たちも含まれていたのだということを知って。というか「上海オーケストラ」というものを意識したのもここが初めてだったような。そんなタイミングで、新聞の書評欄から見付けたのが、こちらの本。
榎本泰子・著
上海オーケストラ物語
西洋人音楽家たちの夢
アヘン戦争以後、イギリス人が貿易の拠点とするため開いた港町だった上海。そこにはたくさんのヨーロッパ人が住んでいました。その地域を「租界」といいます。ヨーロッパの生活様式をすべて持ち込み、こうして中国の地に生まれた西洋の街、「上海租界」。そこには「西洋の音楽」も新しく持ち込まれたのでした。祖国から遠く離れた上海で、上海のヨーロッパ人が愛した「街の楽隊」の物語。
上海租界といって私が思い出すのは、何年か前に公開された「TRY」という織田裕二さん主演の映画です。上海の街の様子を思い浮かべるのには、良かったかなぁという感じ。
戦争というものをきっかけにして、人が動き、それとともに文化も広がっていった様子がよく解りました。それは日本に捕虜としてやってきたドイツ兵の人たちについても同じだろうなぁと思いました。本の中では日本の収容所での様子も詳しく書かれていて(主に、映画『バルトの楽園』の舞台となった坂東俘虜収容所)、映画のことも思い出しながら興味深く読みました。
ヨーロッパ人たちにとっては新天地でも、中国の人たちにとっては他国に奪われた土地。そしてこの後も中国の人々の手に戻るまでには
多くの時間を必要としたのだなと思うと、同じように中国を支配下に置いていた日本という存在にもたどり着くわけで。時代と、他国に翻弄され続けた中国の方には、なんと言ってよいのやら言葉が見つかりませんが……そんな激動をくぐり抜けながら続いてきたということには、やはり音楽の持つ様々な力を感じずにはいられませんでした。
« わー懐かしいー♪ | トップページ | ブタペスト・フィルハーモニー管弦楽団&山本貴志in長野県松本文化会館 »
「音楽」カテゴリの記事
- SINSKE 15周年記念マリンバコンサート「Prays AveMaria+」(2019.02.25)
- 古武道新年会vol.5 初春の狂詩曲(ラプソディー)(2019.01.26)
- ごく私的なイベントメモ(2019年分)(2019.01.03)
- 藤原道山&シュトイデ弦楽四重奏団in横須賀(2018.10.27)
- 藤原道山×SINSKE「花-FlowerS-」in名古屋(2018.06.27)
「本」カテゴリの記事
この記事へのコメントは終了しました。
コメント