クラシックBOOK
音楽の世界では“ジャケ買い”、つまりジャケットのデザインに惹かれてそのCDを買うというのがよく言われることですが。私にとってこの本は、まさにそれでした。表紙には『のだめカンタービレ』の二ノ宮知子さんのイラスト&コメント入り。
飯尾洋一・著
『クラシックBOOK』茂木大輔こだわりの名曲CD付
バロック~現代まで、作曲家別にその人と音楽についてわかりやすく解説されています。文章がいい具合にくだけていて、気楽に読めて面白く、それでいてためになる内容になっています。
私がいちばん気になったのは、メンデルスゾーンのところ。最近ヴァイオリン協奏曲を聴いたからっていうのもありますが…今までに読んだ他のクラシック解説本では、作曲家としてはあまり評価されていないというような書き方をしているものもあって。なかには「恵まれた環境に生まれ、そこから外れなかったから曲に深みがない」とか、かなりきついことを書いているものもあって。でもこの本ではちゃんと作曲家としても評価しているところが良かったです。別に、メンデルスゾーンを特別好きというわけではないですが、いいところをたくさん書いてくれる文章の方が読むのは好きです。
ただ、メンデルスゾーンが恵まれた環境ゆえに、作曲家として以外にもたくさん大きなことをしているのは事実で。たとえば、過去の優れた曲を繰り返し演奏するなど、現代の演奏会スタイルを築いたり、また祖母からバッハの『マタイ受難曲』の楽譜をプレゼントされ(この辺が裕福さを物語ってますよね…)、それをもとに、100年ぶりにこの曲の復活演奏をしたことでも知られています。今では名曲中の名曲、ベートーヴェンの『第九』と並んで人類の宝とまで言われているこの曲を、現在私たちが聴くことができているのはメンデルスゾーンのおかげ、ともいえるわけですね。感謝しなくては。
このメンデルスゾーンのところを読んで「裕福な環境と才能に恵まれた」というところが、私が大好きな漫画『のだめカンタービレ』に出てくる千秋に重なるなぁなんてぼんやり思ったりしました。…でも粘着質で、ひとつのことにとことんこだわるところはベートーヴェンなんですけどね。
また「クラシックが10倍楽しくなる!おもしろ雑学集」という文章では、“クラシック=難しいもの”という意識にとらわれがちなところを、そんなことないんだなぁという気にさせてくれます。
たとえば、演奏会での拍手は「人より先にしない」とか。えっ?って感じなんですが、うん、それはそうかも…と頷いてみたりして。曲の終わりが分かりにくいときもあったり、あとは楽章間では拍手しないっていうのはいちおう決まってますが最初は知らなかったりもします。そういうとき、人より先に拍手しないぞ、と思っていれば、そういう決まりごとを知らなくても大丈夫。気まずい思いをすることもないかな、と。
また、「この曲はこの指揮者のがいい」とか言いがちで、そういうのを鵜呑みにしがちですが「自分がいいと思えばそれ以外でもいいんだ」という、自分のなかの感動を大事にするという考え方。これは、もっとたくさんの人がこれを大事にすれば、クラシックを気軽に、というかもっと身近に楽しむことができるんじゃないかなぁと思いました。…もちろん、じぶんも含めて。
さて、この本にはN響首席オーボエ奏者で指揮者としても活動し、またエッセイの執筆などでも活躍されている「もぎぎ」こと茂木大輔さんセレクトの名曲CDが付いています。本文のなかで紹介されている曲ばかりなので、聴きながら解説を読むこともできます。こういう本って読んでも曲を知らないとなかなか曲がイメージしづらいときもあって、だからといって、わざわざCDを探しに行くっていうのもキリがないので、どんな曲なのかなぁというのを知るにはいいですね。
「茂木大輔こだわりの名曲CD」曲目(*印は冒頭部分のみ)
エルガー 『朝の挨拶』
バッハ 『マタイ受難曲』より
「愛よりしてわが救い主は死にたまわんとす」*
ベルリオーズ 『幻想交響曲』より第2楽章「展覧会」*
シューマン 『ピアノ協奏曲 イ短調』より第2楽章*
モーツァルト コンサート・アリア『神よ、あなたにお伝えできれば』*
ワーグナー 『ジークフリート牧歌』*
ショパン 練習曲ホ短調『別れの歌』
ヨハン・シュトラウス2世 オペレッタ『こうもり』第2幕より
「侯爵様、あなたのようなお方は」
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