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2008年6月 9日 (月)

クラシックミステリー『名曲探偵アマデウス』事件ファイル♯8シベリウス「交響詩・フィンランディア」~美酒は謎の味わい~

Amadeus_2

今回は、日本酒とフィンランディアの意外な関係。

クラシックミステリー『名曲探偵アマデウス』
事件ファイル♯8シベリウス「交響詩・フィンランディア」
~美酒は謎の味わい~

「ベートーベン以後最大のシンフォニスト」と呼ばれたシベリウス初期の傑作。わずか8分あまりのシンフォニーにはフィンランド人ならではの大胆かつ繊細なテクニックがちりばめられています。フィンランドは六百年にわたりスウェーデン、ロシアに支配され、シベリウスが生きた時代は帝政ロシアの圧制にフィンランドが苦しめられていました。そんな曲に杜氏が女将に託したメッセージとは?


今回の依頼人は、老舗の酒蔵を父親から継いだばかりの女将。近くに出来た大手メーカーの工場に対抗しようと、今まで造っていた酒をやめ、口当たりのいい一般受けするような酒を造ろうとしたところ、職人たちが混乱、頼りにしていた杜氏の源さん「若女将にフィンランディアを聴くように伝えてくれ」という伝言を残し行方をくらましてしまったというのです。
そこで天出は、源さんの残したメッセージの意味を探ることに。

「交響詩・フィンランディア」は、低音域の金管楽器が奏でる「苦難のモチーフ」から始まります。これは、スウェーデンや帝政ロシアといった近隣の大国の支配を長きにわたって受け続けたフィンランドの、国民たちの上に圧し掛かる圧迫感を表していました。音程は下がるのに音量は増す…という指示によって、その圧迫感が作られていました。音量を小さくしたものと聴き比べると、小さくしたものはどこか物悲しげではありますが、圧迫感は感じられませんでした。
また次に現れる「闘争の呼びかけのモチーフ」では、金管楽器によって細かく刻まれるリズムの、一拍目に挟まれる休符によって勇ましさとファンファーレの爆発力を、そして「勝利に向かうモチーフ」では高揚感を生んでいました。

そして、「作曲するときにピアノはいらない。必要なのは自然と静けさだけだ」という言葉をのこしているシベリウス。豊かな自然の中で過ごした幼少時代、森で自然の音に耳を傾けた彼は、その音をヴァイオリンで奏でたといいます。心安らぐ旋律に、弦楽器に奏でさせているトレモロは、木々のざわめきや小鳥の囀り、そして流れる川のせせらぎを表しているのでしょうか。この部分で木管楽器が奏でる旋律には、後にフィンランド語の歌詞がつけられて「フィンランド賛歌」という名前でフィンランドの人々に“第二の国歌”とも呼ばれて親しまれているそうです。
このメロディ、休符や付点によってつくられた、フィンランド語によく使われる促音便(つまる音)に似た特長を持っています。そういうところで、フィンランドの人にとっては親しみやすく、また他の国の人々には新鮮で、なおかつ普遍性を感じられるものになっているという。
…源さんが言いたかったのは、オリジナルを貫くことが、老舗の看板を守っていく道だということではないか…と天出は推理するのでした。
後日、考えを改め今までの酒を造り続けることに決めた女将から手紙が届き、杜氏の源さんが、「ゲン・ハッキネン」という名前のフィンランド人であることが判明。シベリウスは圧制に苦しむ祖国を音楽で勇気づけ救った英雄。フィンランド人の源さん…いえゲンさんは、ぜひこの精神を女将に聴いて分かって欲しい、と思ったんでしょうね…。


天出臼夫…筧利夫
響カノン…黒川芽以
小樽もろみ…須藤理彩

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