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2008年8月 4日 (月)

クラシックミステリー『名曲探偵アマデウス』事件ファイル♯12ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」~神の手を持った男~

Amadeus_2今回は、危険な緊急手術…?

クラシックミステリー『名曲探偵アマデウス』
事件ファイル♯12
ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」~神の手を持った男~

名ピアニストでもあったラフマニノフの類い稀なロマンテシズムをたたえたこの曲は、超絶技巧を駆使した難曲でもあり、そして、映画『逢引き』やフィギュアスケートのテーマ曲としても使われるポピュラーな曲でもあります。果たして、この曲にはどんなメッセージが込められているのか、名曲探偵がその謎に挑みます。

依頼人は、…どこかで聞いたような名前の人ですが(笑)、かつて天才と世間を騒がせた外科医。手術ミスが原因でメスを置いた彼は、恩師の手術に恩師自ら指名され、数年ぶりにメスを握ろうとしていました。そんな彼は恩師から渡された一枚のレコードに困惑し、天出のもとを訪れました。
そのレコードはラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番』。これを手渡した直後、恩師はこん睡状態に陥ったため、その意味を知りたい、というのです。

この曲は、ピアニストとしても活躍していたラフマニノフが27歳のときの作品です。『交響曲第1番』の初演が、指揮者の不手際などが原因で惨憺たる結果に終わったことで自信喪失しうつ病になっていたラフマニノフが、精神科医のかけた催眠術によって自信を取り戻し作曲したのがこの『ピアノ協奏曲第2番』。

そんなわけで…この曲の第1楽章で登場する、上がろうとするけれど下がってしまうように感じられる、揺れるようにうねる冒頭のメロディ、そしてクライマックスのメロディによる到達感などによって、人生には苦悩することも必要なのだという…、つまり、自分の手術を、医者として悩みぬいた依頼人に執刀して欲しいという恩師の思いが込められているのでは…と、天出は推理するのでした。

また、第2楽章ではラフマニノフが子どものころに過ごした場所を思い描いたと思われる、たゆたうようなリズムとメロディが登場します。
貴族階級に属していたラフマニノフはこの曲を作った16年後に起こったロシア革命のとき、家族と共にアメリカに亡命しました。移住してから作曲数がめっきり減った彼は、愛する故郷の自然に接していないことが原因だと語ったそうです。故国に戻ることが叶わぬままこの世を去ったラフマニノフ。さぞかし残念だったことでしょう。
恩師が依頼人に、挫折の末に復活を果たしたラフマニノフを重ね合わせ、自分が戻るべき場所に帰って欲しいという思いをこの曲に託したのではないか…と天出は推理します。
つまりこの曲は、これから手術を受けようという恩師から教え子に向けての応援の意味を持っていたんですね…。

天出臼夫…筧利夫
響カノン…黒川芽以
財前八郎…風間トオル

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