軽井沢夏の宵の狂言in軽井沢大賀ホール
一年振りの軽井沢。萬斎さんの狂言を観に行ってきました。
軽井沢夏の宵の狂言
2010年8月6日(金)18:00開演
軽井沢大賀ホール
挨拶 井上燎治
解説 高野和憲
狂言「鬼瓦(おにがわら)」
大名:野村万之介、太郎冠者:月崎晴夫
狂言「附子(ぶす)」
太郎冠者:野村万作、主:岡聡史、次郎冠者:深田博治
狂言「仁王(におう)」
博奕打:野村萬斎、何某:石田幸雄
参詣人:月崎晴夫・高野和憲・深田博治・岡聡史・野村万之介
まず初めに、この狂言の会の主催、燎の会の井上さんから御挨拶と、早くも来年の公演と、それに合わせて行われるという能と狂言の体験講座のお知らせがありました。体験講座もなかなか楽しそうです。
さてそして、次に登場したのは解説の高野さん。私にとっては、2005年と2006年の北野文芸座での公演のときに解説をされていたのを見て以来、久々。とくに2005年のときに「解説が初めて」とお話されていた様子から比べるとだいぶ慣れてこられたのかなぁという感じで、実演を交え、笑いどころを交え、楽しいお話を沢山してくださいました。
とくに印象的だったのは、舞台を大きく円を描くように歩いて場面転換をする「道行(みちゆき)」についての解説。道行の最中に「今日は軽井沢で狂言の会があると聞いたが…、何かといううちに大賀ホールに着いた」という今回の催しに合わせた台詞を聞かせてくださり、ニューヨーク公演のときはこの道行で日本からニューヨークに移動した、というエピソードも興味深かったです。
そしていよいよ、狂言の上演。
最初の「鬼瓦」は、訴訟のため長らく京に滞在していた万之介さん演じる大名が、ようやく国へ帰ることになり、月崎さん演じる太郎冠者とともに進行している薬師如来にお礼参りすると、屋根の鬼瓦を見た大名が「あの鬼瓦は妻に似ている」と言って泣きだす…というお話。自分の奥さんを鬼瓦に似ていると言いだしただけでも可笑しいですが、その鬼瓦がどんな顔か…という描写が出てくると、ますます笑ってしまい、また、そんな大名の様子に太郎冠者が同調して「そう言われてみればどこか似ていますね」と言い出すのも可笑しいです。そんな笑いのなかで、国許での大名とその奥さんの関係をあれこれ想像して、きっと奥さんに頭の上がらないだろう大名が、それでも奥さんを大事に思っているんだろうということが感じられます。
次に「附子」。用事があって出かける主人から、留守番を言いつけられた太郎冠者と次郎冠者は、その風に当たるだけでも死んでしまう猛毒・附子があるから近づかないように…と言われますが、そう言われると気になって仕方なくついに開けてみるとそれは砂糖で、ふたりは夢中でそれを食べつくしてしまい、掛け軸を破り茶碗を壊し、死んで詫びようとして附子を食べたという言い訳をする…というお話。
万作さんと深田さん演じる太郎冠者と次郎冠者の掛け合い、扇子で風を送りながら附子に近づく様の面白さ。とくに、附子(じつは砂糖)を美味しそうに食べながら、それを取り合う様子が可笑しく、また、帰ってきた主人に泣きながら言い訳をする様子は息ぴったりでした。このお話でいちばん可哀そうなのは、留守の間に掛け軸と茶碗を駄目にされ、楽しみにとっておいた砂糖も食べられてしまった主人でしょう。しかし私は、その可哀そうなところよりも、供も付けずにひとりでどこへ出かけたんだろう…ということが気になって仕方がありませんでした。
休憩をはさんで最後に「仁王」。すっからかんになった博奕(ばくち)打が、もう他国に行くしかないとその別れを言いに仲間を訪ねると、その仲間は、博奕打を仁王に仕立てて参詣人を集め、供物を巻き上げる計画を思いつき、まんまと成功したように見えますが、そのうちやってきたひとりの参詣人が、悪い足を直そうと仁王の身体を撫でまわしはじめ…というお話。博奕打を演じる萬斎さんはこの曲だけの出演でした。仁王に化けて、腕を振り上げた格好でぴたりと止まっているものの、参詣人たちの供物がその腕にかけられて、プルプル震えているのが可笑しくて堪りませんでした。また、万之介さん演じる参詣人が身体のあちこちを触って、その手で自分の身体を撫でまわす様子がまた可笑しくて、本当に沢山笑いました。
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