シューマンの指
奥泉光
「シューマンの指」
ピアノの鍵盤がデザインされたこの表紙を本屋さんで見かけてはずっと気になっていた作品でした。というわけで、実はあまり作品についての予備知識がなく読み始めました。
主人公の里崎優が、ある事故(?)で指を失ったはずの天才ピアニスト・永嶺修人(まさと)の指が甦りシューマンの曲を弾いていた、と知らせてきた友人の手紙からその謎に迫りつつ、修人と出会った高校生のころからの思い出を振り返る手記…という体で物語は進みますが、あれこれ語られる思い出は、きっとその“謎”に迫るまでの助走みたいな感じかなーと勝手に想像していたら、それはちょっと、いえだいぶ違ったのでびっくりと言えばびっくりなのですが、途中から感じていた、自分のことなのにどこか頼りなげに綴られる思い出の断片とか、どこか現実感の薄い部分とか、そういうフワフワしたところに感じ続けていた違和感、それを最後の最後に明らかになったもので、ああそういうことか…と納得もした感じ、でしょうか。
作品全体に、シューマンの生涯やその作品についての説明がたくさん出てきて、かなり読むのが大変でしたが、なんとなくですが、少し賢くなった気分で、シューマンの曲をたくさん聴いてみたいなあとも思ったりして、ずいぶん前に「子供の情景」はコンサートで全曲通して聴く機会があったりしましたが、他の曲にも興味が出てきました。
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