東山魁夷館平成28年度第Ⅵ期常設展示「芸術の世界に年齢はない」
今年度最後の訪問。
東山魁夷館
平成28年度第Ⅵ期常設展示
「芸術の世界に年齢はない」
2017年2月9日(木)-3月28日(火)
今回のテーマは「芸術の世界に年齢はない」。
これは魁夷さんが50代の頃に新聞連載したコラムの最終回のタイトル。
これを書かれてから亡くなるまでの30年以上の間、制作を続けられた魁夷さん。
年齢を重ねたから新しいものはもう生み出せないということはなく、また、年が若いからといって年齢を重ねた人よりも良い作品が生み出せないということはないのでしょう。
初心を忘れず人間本来の素朴な暖かさを見失わずにいたいという魁夷さんの言葉は、何気ないようでいてハッとさせるような、きゅんとさせられるような視点を持つ、魁夷さんの様々な作品を瞼の裏に思い出させてくれます。
今回、本制作は代表作のひとつである「白馬の森」や唐招提寺の障壁画の準備をするなかで描かれた「桂林月夜」や「灕江暮色」、ヨーロッパの風景に取材して描かれた「静唱」や「春兆」や「窓」、そして絶筆の「夕星」など、素敵な作品たくさん。
なかでもとくに印象的だったのは「白馬の森」。東山魁夷館へ一年に何度も足を運ぶようになって、何度か目にする機会がありましたが、いつも、何か目に見えない境界線を引かれているように、絵のなかの世界はこちらとは別の、簡単には足を踏み入れられない場所だという思いを抱きます。今回展示されていた作品でいえば、「窓」のような、この絵のなかにパッと入り込んでそこに描かれているベンチに腰を下ろすことも簡単に想像できるような作品とは大きな違いがあるなあと感じます。そんな、風景を描くといっても全く違う世界を描くところが、魁夷さんの凄いところのひとつなのかもしれません。
ところで、偶然にも学芸員さんのお話を聞きながら作品を観るというイベントの時間に居合わせたので、「窓」「白馬の森」「夕星」そして唐招提寺障壁画の準備作について、お話をお聞きすることができました。今までも、自分なりの感覚や想像力でそこに描かれているものから色々なものを感じ取ろう…と思いながら作品を観ていましたが、専門的な知識を持つ方ならではの説明や解釈に触れることで、また新しい視点を得るきっかけになった気がします。とくに、障壁画を手掛けるにあたって、魁夷さんが不慣れであった水墨画に少しずつ取り組んでいた方法が興味深かったです。
さて、今年度の常設展示はこれで最後。
実は来年度、改修工事のため5月31日から長期休館に入る東山魁夷館。
それを前に、こちらに所蔵されている本制作がいっぺんに見られる特別展が開催される予定。楽しみです。
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