〈あの絵〉のまえで
小さな奇跡のお話。
原田マハ
「〈あの絵〉の前で」
ゴッホ、ピカソ、セザンヌ、クリムト、東山魁夷、モネ。それぞれの絵の前に立つ人の、それぞれの物語。
ふだん、マハさんの本は長編を読むほうが好きですが…、でもそのちょっと物足りない感じがちょうどいい、とも思いました。
今回良いなと思ったのは、全部日本国内の美術館にある作品というところ。海外の美術館が出てきたり、画家の人やその周りの人が主人公だったりするものにのめり込んで読むのも好きですが、こういう身近な場所にも出会える絵があり、そこに何か物語がある、かも…?というのを感じられるのが良かったです。
そして、私の好きな東山魁夷さん、長野市の東山魁夷館が登場しているのが嬉しかったところ。
マハさんの作品で魁夷さんの作品が登場したのは「生きるぼくら」の「緑響く」に続いて2回目。今回は「白馬の森」。これも「緑響く」と並んで東山魁夷館の代表的な所蔵作品のひとつ。
「聖夜」というお話の登場人物たちがこの絵に抱いたイメージとはまた別のイメージや思いをもって、私はこの絵の前に立つことが多いのですが、そうやって、同じ絵だとしても見る人それぞれの、その絵の前に立つまでの色々があって、それぞれにその絵の前から立ち去って行く。
美術館や一枚の絵の前で、様々な人の思いや物語が交錯することを想像して、また今度、あの大好きな場所を訪れること、大好きな作品の前に立つことが楽しみになりました。
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