映画「騙し絵の牙」
2021年、映画館で観る1作目はこちら。
映画「騙し絵の牙」
大手出版社“薫風社”は出版不況と創業一族の社長が急逝したことで、権力争いが勃発。配管の危機に立たされたカルチャー誌の編集長は、様々な起死回生の奇策に打って出る…というお話。
小説のほうをまず読み、映画を観に行きました。
映画の公式HPや予告編を見た時点で、これは小説とはほぼ別物だろう…と予想はしていましたが、予想以上に全く違うお話になっていて、本当に驚きました。そして、映画のストーリーがめちゃくちゃ面白く、様々な登場人物のキャラクターがそれぞれにみんな魅力的だったことに感動しました。
大泉洋さん演じる雑誌編集長の速水は、小説と映画では全く違うキャラクターと言ってよく、これは本当に不思議なことに、当て書きされているのを知っていて大泉洋さんを思い浮かべながら読むからか、小説で読むほうが速水が大泉洋さんらしく思えて、映画で観るほうが、大泉洋さんが演じているのに大泉洋さんらしくないというところで、これも驚きでした。
映画ではもうひとりの主人公と言うべき人物、松岡茉優さん演じる高野恵。これまた小説と映画では全く違うキャラクターでした。小説のほうの高野恵は、なんだかんだで有能で魅力的で、それゆえに速水をハラハラさせる存在でしたが、映画では、生まれ育った環境ゆえに小説が大好きな、でも一生懸命なんだけど不器用なところもあって、つい応援したくなるようなキャラクターになっていました。
小説のなかの速水は、編集者として作家と一緒に小説を、“物語”を作り上げるということに喜びと生き甲斐を感じる人物でした。
映画のなかの速水にはそういう部分はありませんでしたが、もしかしたら、小説ではなく、出版不況を生き残るために、周りの人や環境を思い通りに替えていく“物語”を作り進めようとしているのかな…と感じました。
その時々で自分の目的のために色々な人と手を組み、必要とあれば手を組んだ相手と袂を分かつこともためらわない、そんな速水を驚かせるような行動をとる、ある人物…。
個人的には、映画のほうのストーリーがとても好みでした。
それと同時に、小説のほうの何ともいえないモヤッとした感覚の残る展開にも心惹かれます。
これは、映画と小説、どちらから触れてもどちらも同じだけ楽しめる素晴らしい作品だと思いました。
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