ペスト(デフォー)
2冊目の“ペスト”
デフォー
「ペスト」
1655年、ロンドンを襲ったペストの大流行。そのなかで人々はどう生きたのか…。
実際にあったペスト禍を題材に書かれた小説ではありますが…、いわゆる小説らしい物語の筋や主人公や章立てのようなものはなく、H.F.という馬具商の男性が見聞きしたこと考えたことが400ページ以上にわたって書かれていて、何度も色んな事柄に話が飛んだり時系列が前後したり同じような内容が繰り返されたりで分かりづらいところもありますが、今の時代で言えば、コロナについてSNSとかで色んな人が色んなことを言ったりしているものを見ているような生々しさがあるなあと感じました。
そして、神様や、ときには占いや怪しげな薬や説にすがりたくなったり、感染の広がり方や予防方法には医者すらも意見が分かれることがあったり、都市部とその周りの町や村との持ちつ持たれつの関係ではありながらペストをめぐっての攻防があったり、感染による被害が甚大なことや疎開する上流階級の人々の陰で、仕事を失ったりする庶民がいて感染予防と日々の暮らしの両立が難しかったり、少し感染状況が落ち着いたかも?というときに油断してしまったり、このコロナ禍で身近に感じていることがたくさん詰まっていました。
また、夥しい数の遺体を埋葬するためにつくられた墓地がその後どうなったかを詳細に書いているなかに、住宅地になったエリアで、住宅を建てるために土を掘り返したときに出てきた遺体を集めて埋め直した場所というのが出てきますが、後の時代の人にはパッと見にはなんだか分からない誰も立ち入らない謎の土地とか、逆に、人の死や人々の口が重くなるような過去の出来事とは程遠い種類の建物がある場所とか、そういうものに関して上の世代の人たちが「実は昔、あそこには○○があってね…」と言う、みたいな話っていうのが、実は身近にもあったりするなあ…なんてことも思ったりしました。
昨年秋からだいぶ長いこと時間をかけて読んだせいで、ペスト禍とコロナ禍での人々の動きに共通点があったりするのをリアルタイムで感じるところもありました。あとは…1665年のペスト禍と同様、終息する日がくるのを願うばかりです。
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