日本沈没(小説)
日本がなくなる、そのときに。
小松左京
「日本沈没」(上下巻)
太平洋にあった無人島が一晩で沈む。深海潜水艇での調査で海底の異変に気づいた研究者たちがタイトルのような結論に至り、日本列島は地震や噴火などの災害に次々見舞われていく。そんななかでも多くの人はそれに慣れてしまう…。そして、日本列島の危機に、国民の海外脱出のために密かに交渉を進めていた政府。そして週刊誌に踊る「日本沈没」というセンセーショナルな見出し。
以前、Eテレの「100分de名著」で小松左京さんの作品を取り上げていた月に紹介されて気になっていて、それからずいぶん時間が経ってしまいましたが、ようやく読みました。
なぜ日本列島が沈没するという結論に達したのか…など、内容的に難しいところがかなりありましたが、なんとか読み切った感じ。
災害が相次ぐ様子や人々の様子が逐一細かく描かれることで、阪神淡路大震災や東日本大震災はもちろん、数々の台風や豪雨による災害、そして現在のコロナ禍を思わずにはいられません。とくに、大災害を経験した人々が用心のために始めたものの光景は、マスク姿の人々が町中を歩く今の様子を重ねずにはいられません。
このコロナ禍のなか、カミュの「ペスト」など感染症が猛威を振るうようなパンデミックものはいくつも読む機会があったのですが、実はこの「日本沈没」はそういうつもりは全くなく読み始めたので、感染症によるパンデミックもまさに“災害”なんだ、ということをこんなに強く感じ、心に刺さることになるとは思っていませんでした。
そして、田所博士の語り、解説に書かれた第2部を書くことをためらう原因となった部分など、色々なところに小松左京さんの日本や日本人に対する思いが強く籠っているなあと感じました。
いま、読むことができて良かったです。
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