軽井沢夏の宵の狂言
今年も。
軽井沢夏の宵の狂言
2019年8月3日(土)18:00より
軽井沢大賀ホールにて
解説:石田幸雄
狂言「末広かり(すえひろがり)」果報者:野村万作/太郎冠者:内藤連/すっぱ:深田博治
狂言「膏薬煉(こうやくねり)」上方の膏薬煉:高野和憲/鎌倉の膏薬煉:中村修一
狂言「止動方角(しどうほうがく)」太郎冠者:野村萬斎/主:野村太一郎/伯父:石田幸雄/馬:野村裕基
まずは石田幸雄さんによる解説から。分かりやすい演目解説の他、8月末にNHKの番組で「靭猿」他が放送されるというお知らせがありました。春に国立能楽堂で観た「靭猿」がもう一度テレビで見られるのはとても楽しみです。
そして解説に引き続き「末広かり」。この曲を観るのは何度目かになるのですが、太郎冠者が「“すえひろがり”ってなんでしたっけ?」と主人に一言尋ねれば、都で「末広がりください」と大声で言わなくてもいいし、すっぱに騙されて傘を買うこともないし、主人にひどく叱られることもないし…という、いちばん最初のひと手間を惜しんだがゆえに色々大変なことになるよねっていう現実にも起こりそうなことをいつも思います。まあ…、これはフィクションなので、そこの言葉の食い違い、太郎冠者がすっぱに教わった歌をうたうと、怒っていた主人も興が乗って踊りだす…というほのぼのなラストが楽しいのですが。
続いて「膏薬煉」。上方と鎌倉、膏薬煉の名人同士がそれぞれに自慢を繰り広げ、実際に腕比べに興じるというお話。土地の名前が出てきて、「自分は(自分の土地は)これこれこうだ」と競い合うお話、「佐渡狐」とかもそうかなあという感じですが、この曲に出てくる「上方」と「鎌倉」は、この曲ができた頃の時代背景とかが関係あるのかなあ、なんてことを、舞台上で繰り広げられる面白可笑しい対決を眺めながら考えていました。
さて、休憩をはさんで最後は「止動方角」。お茶比べで見栄を張りたい主人に命じられ、伯父にお茶と太刀と馬を借りに行く太郎冠者。小言を言われながら戻ると、ねぎらうでもなく文句を言い続ける主人に腹を立て…というお話。伯父から聞いた馬の欠点を利用し主人を陥れ、主人にされたことをそっくりそのまま仕返す太郎冠者。でも、調子に乗りすぎてしまう…。太郎冠者らしい太郎冠者だなあと、そのお調子者っぷりを楽しみました。この曲に登場する馬も、それ用の衣装と、動物などを演じる時の面を付けた演者さんが扮しています。今回のお馬さんは、萬斎さんの息子さんの裕基さん。私の知る限りでは、軽井沢のこの会では初登場ではないでしょうか…。最後、幕の向こうまで一気に駆けていくのが、四つん這いとは思えぬ速さでした…。素晴らしいです…。
さて、来年の公演でも、その裕基さんが「舟ふな(ふねふな)」で出演される予定とか。萬斎さんのお名前がないので、もしかすると、来年の今頃はなにかとお忙しいせいかな…なんてことを想像しています。なにせ、東京2020オリンピック・パラリンピック開会式・閉会式チーフ・エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター(←長い!)ですもんね…。
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