『わが魂は輝く水なり』inシアターコクーン
上演期間もかなり終わりに近づいた感がありますが…ようやく、観に行ってきました。チケット取ったのもかなり遅かったので、そんなに良い席ではなかったですが、舞台への集中度と客席との一体感を謳っている劇場だけあって、なかなか見易く、また居心地のいい会場でした。
『わが魂は輝く水なり』
(Bunkamuraシアターコクーンにて)
平安末期、源平合戦のさなか。
平安の武将・斎藤実盛(野村萬斎)は、60歳という老齢の身ながら合戦が続く日々を送っていました。敵は木曽義仲。かつて幼い義仲の命を救ったのは、ほかでもない実盛。そして実盛の息子・五郎(尾上菊之助)は同世代の義仲、巴(秋山菜津子)らと親交を深め、京に向かい兵を挙げた彼らと行動を共にしていました。しかし五郎は不慮の死を遂げ、今は亡霊となって実盛の傍らにいるのでした。
そしてついに、実盛のもうひとりの息子・六郎(坂東亀三郎)までもが義仲のもとに走ってしまいます。…しかし、六郎が見た義仲軍はあまりにも無残で…。
冒頭、琵琶の音と「祇園精舎の鐘の声…」で始まる平家物語。そこから何か、不思議な力が働いたみたいに、舞台に意識が吸い寄せられていきました。で…緊張感と、それがちょっと緩む、コミカルなシーンがいい具合に混ざり合って、そのバランス感覚がすごいなぁと思いました。
萬斎さんが演じるのは、白髪に髭で腰を曲げて歩く老齢の武将・実盛。普段狂言の舞台などで拝見する颯爽とした(太郎冠者とかの)姿とはがらりと変わった様子でしたが、またこれも良かったです。そして、後半の合戦の場面では、見事な殺陣。「え?え?今どうやって動いたの?」って目を瞬いてしまったところもあって…そのスピードと俊敏さ、身のこなしの軽やかさはさすがだなぁと…今年初めにNHKで放送していた『鞍馬天狗』を思い出しました。
そして…いちばん最初に舞台に登場したのは、五郎を演じる尾上菊之助さん。もちろん美しかったんですけども、私はとくに、声が…ほんとに清々しくていいなぁ、好きだなぁと思いました。父親の実盛について歩く亡霊、という役柄(?)でしたが、そのちょっと現実離れした雰囲気に引き込まれ、また親子の間での会話だったり…それが面白くってかなり笑ってしまいました。
実盛以外には見えない、そして聞こえない五郎の姿と声。そんな彼と話す実盛は、周囲からキ×ガイではないか…と疑われていく、その様子もかなり滑稽でしたねぇ…。
かと思えば、実盛がふたりの息子に対して抱く複雑な思いや、戦いを続ける中でそこに関わる人々をどこかまともでいさせなくするなにか…が姿を現してきたりして、ドキドキさせられます。
私は萬斎さんが好きだからこのお芝居を観に行ったわけですけど…もちろん萬斎さんの素晴らしさは言うに及ばず、菊之助さんは菊之助さんで、美しいばかりでなくコミカルな部分も見せてくれて…それもいいなぁと思えて、また秋山菜津子さんの演じる巴が見せる可憐だったかと思えば勇ましい様子に心奪われ…、亀三郎さんの演じる六郎から見える野心とひたむきさにドキドキさせられ…。そうそう。私は長谷川博巳さんの演じる惟盛もかなり好きでした。なんというか…いい意味でも悪い意味でもお坊ちゃんな感じと飄々としたところが笑いを誘いました。…それぞれのキャラクターがすごく魅力的で、萬斎さんが出ていない場面もみんな見所いっぱいで楽しませてもらいました。
この間読んだ「婦人公論」での萬斎さんと蜷川さんの対談。蜷川さんは「液体を用意してます」と言っておられて、「オイディプス王」のときは血糊だったんですけど、さて今回は何だろう?と思っていたら…最後に白粉(おしろい)と紅(べに)が出てきて…合戦のなかで自らの老いた姿が目立つ、という理由で髪を黒く染め白粉まで塗ってしまうという(笑)。狂言では若者だろうが女性だろうが素顔で演じるので、普段は見られない光景にびっくりでしたが…、見かねて手直しをしてあげる五郎っていうその辺りが更に可笑しかったです。
まぁそんなこんなで(?)、ほんっとに楽しませてもらったお芝居でした。
もっと先のような気がしていましたが、来週末、6月1日には萬斎さんが「塩尻能」への出演で塩尻にいらっしゃいます。曲は「梟山伏」。今年初めて地元で観る萬斎さん。楽しみです。
また、コクーンでは平成中村座「夏祭浪花鑑」のポスターを見ました。6月に公演があるそうですが、まつもと市民芸術館での公演は7月前半。こちらはなんとかチケットが取れたので、楽しみに待ちたいと思います。
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